選択の果てに 前編 大丈夫だよ カアサン
自分は何かを選ぶのが下手らしい
本屋に行けば選んだ本が新品なのにやぶけてる
2台並んでいる自動販売機で缶コーヒーを買おうとしたら選んだほうは壊れている
分かれ道で選んだほうは行き止まり
選んだ今の嫁…の話は やめとこう
何にせよ 人生は選択の連続だ その選択が未来を決定して行く
つねに最良の選択が出来たなら人は後悔せずに幸福だけを掴んで歩んでいけるのだろうか?
スーパーで買い物をした
お目当ての商品をカゴに入れ いざ会計をしようとレジを見る
小さなスーパーだ レジは3台だけ
左レーン 並んでいる客は3人だ だが3人とも買い物カゴには満載に商品を入れている
時間がかかりそうだ
ならば
中央レーンは どうだ? 客は4人 全体的に 皆 買い物量は少ないみたいだ ここが早いか?
右レーン 客は2人!サラリーマンと お婆ちゃんだ
サラリーマンは財布からカードを出している
これなら すぐに会計が終わるだろう あとは お婆ちゃんだけだ 買い物量も少ない
チャンスだ ここだ ここに並ぶのが得策だ
自分は お婆ちゃんの後ろに並んだ
お婆ちゃんの会計は順調に進み お金も支払い終わった
だが 会計の済んだ お婆ちゃんが動かない その場を離れない
何やらレジの年配女性店員に見つからなかった商品の場所を教えてもらおうとしているようだ
しかし レジの年配女性店員は要領をえない
お店のチラシを見たり 隣のレジの従業員に聞きに行ったりバタバタしている
早くしないかなと思いながら自分は ふと年配女性店員の名札を見た
そこには研修中の文字が赤々と書いてあった
……だから この列は人が並んでなかったのか これは時間がかかるかも知れないと自分は思った
だが ものは考えよう
人は死に向かい生き急いでいる たまには ゆっくり生きるのも良いのかも知れない
自分の人生の現状を 過去を未来を 見つめ直す貴重な時間が出来たと思い待てばいい
早い話 諦めだ いつものことだ
それに見ろ!
この年配女性の左手を!薬指に結婚指輪をしているではないか
歳を重ね慣れないレジ打ち仕事で 肉体 精神 共に疲労しているだろう
家に帰れば母親の仕事があり 中学生の息子なんかいて
「カアサンの作る ご飯が1番 美味しいよ」
「何言ってるの そんな事を言っても お小遣い上がらないわよ」的な やりとりがあったりするんだろう
カアサン 頑張っているんだね
自分は待ってるよ あせらしたりイラついたりしないよ
だから思う存分 レジを打ってくれ
自分の前にいた お婆ちゃんは
商品の場所をカアサンに教えてもらうのを諦めて帰って行った
ついに 自分の会計が回ってきた
カアサンは買い物カゴから商品を取り出し バーコードを読み取らせて隣のカゴに入れていく
ピッ ピッ ゆっくりではあるが順調だ
ピッ ピッ グシャ
ああぁー!自分のポテチがぁ!
カアサン ポテチを置いた上に6缶パックのビールを置いちゃったよ
ポテチの複雑骨折は確定だ
「ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい」カアサン 凄い平謝り
何も そこまで謝らなくても…
「今すぐ お取替えいたします」
『いえ 大丈夫です』自分は そう言った
取り換えするのも時間がかかりそうだし
何よりも 今の自分は慈悲と慈愛に満ちた仏の境地にいる
角度によっては後光も見えたはず!
全てを悟り 全てを許す
カアサン 気にするな さぁ続きを
カアサンはカゴの中を整理すると
また
ピッ ピッと仕事を再開した
後編へ
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