選択の果てに 後編 光速のレジ打ち

カアサン 覚醒

人生の苦労が目尻のシワに刻まれ日々の家事の苦痛が指先のひび割れに現れ

そして 今まで経験した事のなかった仕事の重圧が

白さを増した髪に更なる白さを与えているんですよね カアサン!

レジ

研修中のカアサンは自分のポテチに大打撃を加えてしまった失敗を払拭するかのようにレジ仕事を進めていく

ピッピッピッピ

カアサン頑張るなぁ さっきよりもバーコードの読み取りが速いぞ!

ピッピッ ピピ ピッ

あ!カアサン 今 二度打ちしたでしょ!
1個が2個あることになる!無我の境地にいる自分でも さすがに これは見逃せない!

『…あの 今 二度打ちでしたよ』
「えっ!あー!ごめんなさい 本当に ごめんなさい」

カアサン 何を そんなに恐れているの?
自分は慈悲深き仏だよ 雷におびえる犬のように震えなくても大丈夫だよ

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カアサンは たぶん覚えたての取り消し作業を たどたどしくレジに打ち込んでいく

出来るのか?研修中のカアサンに…

時間は多少かかったが無難に出来たようだ

カアサンは気を取り直して仕事にかかる

ピピピピ

さらに速くなってる!そんなに速く打ち込んで大丈夫かい?カアサン

ピピピ ピィ――!

自分ビクって カアサンもビクって
エラー音だ カアサン大慌て目が丸くなっている

甲高い音を聞きつけて若い女性店員が駆けつけてきた
カアサンにとっては娘とも言えるぐらいの若い子だ

その子はカアサンに操作方法を分かりやすく丁寧に教えている
カアサンは必死に覚えようとするが かなり苦戦している

そのたびに その子は辛抱強く そして優しく操作方法をカアサンに教えていく

自分という客がいる目の前で!

カアサンよりも自分が覚えちゃったよ それ
教えるのは良いけど客のいない時にして欲しいのだが…

もしかして

自分は閉店まで ここに立っていることになるのか?
閉店しても立っているかも知れない

このスーパーこのレジの前で自分は即身仏となり10年後も20年後も その先も 自分は ここに有り世界の移り変わりを眼を半眼にし諸行無常にて感じていくのかも知れな「……円です」

終わったらしい

自分は お金を払おうとした瞬間 血の気が引いた

サザエさんのように財布を忘れたわけじゃない 財布はある 金がない足りない
あるはずの千円札が1枚 足りない

自分は脳みそをフル回転させた

過去の歴史が走馬灯のように高速で脳内を流れ始める
その中からグーグル検索のように 自分に必要な情報をピックアップしていく

幼少期の記憶は必要ない そんな古い情報は要らない
最近の情報だ

【あるはずの金がない】―検索―結果1308件ヒット 多すぎる!
絞り込み 【今日】―検索―1件ヒット 自動販売機 それだ!

思い出した 自販機で缶コーヒーを買おうとして千円札を出し あっ スーパーで買えばいいんだと止めた時に反対のポケットに千円札を押し込んだんだ

よし これで長かった会計が終わる その時カアサンが

「早くして下さい 後ろがつかえてますので」
ええー!あんたが言う?それを!

イヤイヤイヤイヤィャ あんたのせいでしょ!

仏の顔も三度まで
自分は最後にカアサンに向け言った
『…待たせて すいません』

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終わり

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