運命のコイン 裏

事の起こりは雨の日の昼休み

自分はアンパン メロンパン フレンチトーストの幼児向けアニメキャラそろい踏みの昼食を食べるのに
缶コーヒーが欲しかった
ただ それだけの事だった

お金

――コインを投げれば 表か裏のどちらかが出る
どちらが出たにせよ その過程と結果が運命だ
だが
人がコインに細工をしたなら
過程を人為的に操作し結果を望むように造ったなら
それは運命に抗い運命を変えたとも言える――

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今や雨は本降りだ

自分は少しでも雨を避けようと街路樹の中で 1番大きな木の下に逃げ込んだ

服はずぶ濡れ 片足は痛い 二百円を失い
八方ふさがりの自分に 突如 舞い降りた天才的な閃き

自動販売機に苦情受付の電話番号がないなら この自動販売機にジュースを提供している飲料メーカーに直接 電話すればいい

自分はスマホの検索機能をフルに駆使し 飲料メーカーのサイトから苦情受付係への電話番号を見事に手に入れる事に成功した

そして飲料メーカーの苦情受付係に電話をかける

電話に出たのは若い女の子ではなく年配のオッサンだった

たぶん 裸にエプロンはしていないと思われるオッサンは
丁寧と言うよりは「申し訳ございません」と謝罪する気持ちと

「もう何件も文句を言われて疲れているんですよ」の疲労感が上手く染み込んだ
いかにも苦情受付係に適した話し方をしていた

自分は 缶コーヒーを買おうとしたら商品は出ないし 二百円は戻らないし 雨に濡れ寒いし 足は痛いしって事をオッサンに『ちょっと怒ってますよ』の感情を込め説明した

オッサンは
「自動販売機に故障時の電話番号が張って有りますので―」
自分はオッサンが言い終わるのを待たずに
『それがないから メーカーに直接 電話してるんだけど』

「あっ 申し訳ございません ちゃんと張るように業者への指導をしているんですが―」
『指導したって 現に張ってないし』
「申し訳ございません …あの 自動販売機の製造ナンバーは分かりますか?自動販売機の正面の下の方にございます」
『……』

そう言われ自分は渋々 雨宿りをしていた木の下を離れ 憎き青い詐欺自動販売機の前に移動した

容赦なく降り続ける雨の中
自分は自動販売機を見る
正面の かなり下の位置に鉄のプレートが有り そこに細かい数字が書いてある

『あるよ なんか数字』自分は オッサンに そう答えた
オッサンは「では 読み上げて下さい」と気楽に言う
『……』

数字は座らなければ読めない位置にある

自分は覚悟を決め 嫌々しゃがむ
案の定 濡れたズボンは しゃがむ事で冷たく足に張り付いてきた
『ひゃあ!』間抜けな奇声が口からでた
「どうかされましたか?」
『…いえ すいません 大丈夫です 数字 読みます』

自分は数字を読み上げ オッサンは自動販売機の場所を確認したので係の者を向かわすと言った

その後 お金の返却方法の話になり
自分は自動販売機から離れた場所で仕事をするので自宅への郵送を選んだ

住所と携帯の番号を伝えオッサンとの電話を切った

やるべき事は これで終わった

そして自分の昼休みも

腹を空かしながらも鬼のように仕事に励む自分 そこに電話の着信
オッサンからだった 係の者が確認したので 二百円を返却するとの事

服が濡れていながらも修羅のように仕事に励む自分 そこに電話の着信
係の者からだった 確認したので返却するとの事

二度手間だ!!

後日 郵便物の預かり証が家に届いていた

ハッキリ言って郵便局まで取りに行くのが面倒だが 自分で蒔いた種 刈り取らなければ終われない

身分証を持ちハンコを持って郵便局に行き封筒を受け取った

封筒は厚い もしかしたら謝罪の手紙…いや 商品券が入っているかもと期待しながら

自分は封筒を開けた

手のひらに 百円玉 二枚だけが落ちてきた

失われた二百円は運命に操られ こうして自分の元に戻ってきた

ちなみに封筒が厚かったのは現金を郵送するために入れたであろう ただの厚紙のせいだった

愛と勇気を絶対の糧に勝利し続ける 子供の英雄 アンパンマン
だが
自分のアンパンマン的昼食は
ロッカーの奥でヒッソリとバイキンマンに敗北している
これは子供たちの夢のため ここだけの秘密だ

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終わり

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