虚空に叫べ 破

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どんなに冴えない気分でも彼女の笑顔を見れば
台風の後の青空のように心は晴れ渡る

自分の思考回路は単純かつ短絡であるがゆえ欲が更なる欲を求めるを止められず

明日へ繋がらぬ笑顔に期待を込める

本当に欲しい笑顔は記憶の奥底 霞に隠れ 淡く遠くに見えていると知っているのに…

谷間

きらびやかなドレスに身を包んだ女性達がこちらに向かってくる

宴の始まりだ

だが 自分の心は下がったままだった

店の片隅 角の席に座ってしまった自分
大人の社交場クラブでの最高の席 四面女花を逃した自分が 今 座っているのは左側が壁の席だった

この席の致命的欠陥が徐々に自分を蝕んでいく

左が壁!もたれて寝るには都合が良いが それ以外の何の役に立つと言うのか!

温度!この席は寒い 一度はぬいだ上着を 再度 着てしまうほどに!
温風が回って来ていないのだ 角の掃除が出来ない初期型ルンバのように壁に阻まれて隅まで温風が来ていない

光量!最悪だ 頭の上にある電球が自分の事を意味なくスポットライトで照らしてくる
こんな店の片隅でスポットライトに照らされても誰も見やしない
しかもスポットライトが明る過ぎる!
ここはファミレスか?自分にWi-Fi使ってタブレットをいじれって言うのか!

ただでさえ気分が乗っていないと言うのに この状況 少しでも気分を変える手掛かりはないかと自分は店内を見回す

店の中央 団体客用の席 そこに座っているのはスーツを着たグループだった

頭の髪は薄くなっていたり真っ白になっていたりの年配グループ

かなり盛り上がっている
場慣れしているのだろう
定番オヤジギャグや鉄板小話を披露したりしているんだろう

グループが同年代で組まれているのが吉と出ている
同じ話を何度もしていることに本人も気づかないし周りも気づかない そんな感じで盛り上がっているんだろう

自分は壁沿いのソファ席を見る

こちらはひとりで来ている50代ぐらいのオジサンだ

黄色いセーターの上に茶色いカーディガンを着ている
履いてるズボンはパッチワーク付のジーンズときたもんだ!

どことなくアートスティックな気もするが それよりも相当な寒がりな印象を強く受ける

ニコニコしながら飲んでいる
女の子が席を外して周りに誰もいないのに微笑んでいる

かたわらには大きな紙袋が置いてあり中には女の子へのプレゼントが入っているのだろう

時折 取り出しては確認している

ちらりと見えたがセンスのないバッグだった

センスのない自分が そう思うんだから悲しいほどにセンスがないバッグだ

悲しいバッグとオジサンの微笑み

プレゼントをあげた時の女の子の表情を想像し思い浮かべているのだろう
かなり楽しいそうだ

微笑みは止まらない

自分の位置からはカウンター席は見えない

他に目につく客は若い男の三人組

20代前半か?この店には珍しい客層だ

女の子も三人ついているのに盛り上がりに欠けている
女の子達が話かけ盛り上げようとしているのに男達が口下手なのか緊張しているのか上手くいかない

この男三人にはリーダーがいないのかも知れない

お互いが対等の仲 似たもの同志なんだろう
その場を引っ張る力が足りない

リーダーが女の子の話を聞き話題を定め仲間にふる
だが リーダーが前に出過ぎてはいけない
この場に必要とされるリーダーは一歩引いて全体を統率するリーダーだ

ビル ゲイツやスティーブ ジョブズは ここには必要ない お呼びではないのだ
ビジョン型リーダーが必要なのだ

盛り上がっていない若い男達に 頑張れと応援したくなるところだが 生憎それは出来ない

何故なら このクラブで最も盛り上がっていないのが自分なのだから人の心配をしている場合ではない

密接距離のパーソナルエリア

自分達の席に三人の女の子が来て空いてる席に座った

今のところ得をしているのはクマさん先輩の友達

両手に花状態+前にもテーブルを挟み女の子 四面女花まであと一手

次に得をしているのはクマさん先輩だ

このクマさん先輩 後輩に奢る もしくは後輩のために多く お金を出すと言う行為を知らないのか あえて 社会の厳しさを後輩に教えるためなのか

会計は つねにワリカン

それなのに指名で お気に入りの女の子を隣に座らせる
指名料ワリカン こりゃタマラン 言ってる場合か!

自分は隣に座った女の子を見る
ソファー席に座る自分とクマさん先輩の間に座った子だ

クマさん先輩の お気に入りで指名料を払ってでも席につかせるほど入れ込んでいるのが この子だ

この子は胸の前が大きく開いたドレスを着ているため世間で言う所の巨乳が 巨乳の谷間がのぞいている

ハズなのだが

彼女はクマさん先輩と話をするため自分に背を向けている

今は彼女のうなじに萌えを感じるほど わびさびな気分ではない

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クラブに置いて 隣に座る女の子と話をするのが盛り上がるための必須条件

横に座ると言う行為は
お互いのパーソナルエリアが極度に近く接するために親しみの感情が芽生えやすい
恋人の距離と言える

右側に座る この子だけが自分のパーソナルエリアと接する相手なのに 今後のクマさん先輩との関係を考えると邪魔をするのは得策ではないだろう

左側の壁には イヤと言うほどパーソナルエリアがくっついているが壁は無口過ぎる これ以上の親密な関係には発展しないだろう

では正面は どうだ?

盛り上がるには いささか不利な位置だ
どんなに話が盛り上がったとしても二人の間には埋まらない距離 テーブルがある
しかも
正面での会話はビジネスに適した位置と言われている

真正面から向き合うのは緊張感が生まれやすい
相手の視線の動き 手の動き その他もろもろが見えるせいで気が抜けないのだ

でも
隣に座る女の子がクマさん先輩に取られた以上 正面の子と話をするしかない

自分が いざ正面の子と話をしようと顔をあげたら
先輩の友達が自分の正面の子とテレビドラマの話をしていた

なんてことだ!!先輩の友よ!
話をする相手が違うぞ!その子は自分のテリトリーの中だ

お前は お前の左にいる子と喋るんだよ!

先輩の友達は淡々とテレビドラマの話をしている
しかも聞いてる子は そのドラマを知らないらしく返事が雑だった

ドラマの話なんて どうでもいいんだよ!お前のあだ名は今日からドラマーだ

ドラマーが自分の正面の子と話をしているため
今 暇にしているのはドラマーの左隣 テーブルの端にいる自分の対角に座る女の子だ

自分の視線に気づいたのか その子が こっちを見た

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続く

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