虚空に叫べ 序

先輩に連れられクラブに行ったのは いつのことだったか?
クラブと言っても音楽がガンガンに響くクラブではなく女性が隣に座るクラブ

唇

自分は 今 過去を振り返り反省しなければならない

クラブとは楽しませて貰う前に 自ら楽しむことが大事なのだ
自分には それが出来なかった

今後のためにも その原因を追究し解明しなければならない

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宴への心構え

暗い階段を下りた先にあるドアがクラブへの入り口だ

自分は ちょっと太めでクマさん似の先輩
先輩の友達である 昔のドラマに出て来そうな熱血教師をヘボくしたような男と一緒にクラブへと続く階段を下りていた

待ちに待ったクラブだと言うのに 店に入る前から自分の気分は下がり気味だった

その原因は明白
集合場所である小さな居酒屋で看板娘を相手に盛り上がり過ぎた

自分達三人は酔いに酔い 浮かれに浮かれ喋るに喋りまくり笑い笑わせた

この時点で 男の生きる原動力 仕事の糧 生活の潤いの元となる女性の笑顔を見るが達成されてしまったのだ

これ以上 女性の笑顔を補給しても栄養過多になるだけだ
許容範囲を超えた女性の笑顔は毒になる

家に帰り 冷たい布団の中で儚く甘い巨乳の子との夢を見るのが無難な夜の過ごし方だろう

しかし
自分達三人はクラブに行かなければならない

クマさん先輩の知り合いのママが経営するクラブだ
予約を入れた手前 ドタキャンするのも今後に影響する

タクシーを呼び気の進まないままクラブへと向かった

タクシーの車内で自分は大きな達成感と充実感から浅い眠りに落ちていった

まどろむ自分

そして 突如 肩を揺らされ目が覚めた
クマさん先輩は気持ちよく眠る自分を容赦なく起こしたのだ

もう少しで大好きな あの子の巨乳をもめそうだったのに!

自分の大切な瞬間を壊したクマさん先輩を蜂蜜漬けにして殺してやろうかと殺意が芽生えたが
残念ながら蜂蜜を自分は持っていなかった

命拾いしたな!クマさん先輩よ!

知らない間に命拾いしたクマさん先輩は階段を下りクラブへのドアを開けた

自分は重い気分で後へと続きクラブの中へ

クラブに入ると目の前にカウンター席がある そこから右に行くとトイレがありカウンターの向こうは厨房と女性の控室になっている

たぶん
このクラブを上から見ると ほぼ正方形になっているだろう

カウンターから左に歩き 突き当たりを右に そこがテーブル席のフロアーになっている

壁際にはソファーが置かれ その前にテーブルと椅子だ
正方形の中央には仕切りがあり団体客ように大きな楕円のテーブルとソファーが配置されている

案内されたのは奥の席だった
入口から最も遠い角の場所だ

入口から左に行き 突き当りを右に そこから歩き突き当りを右に また歩き突き当たった席だ 店内を半周する感じ

これが歌舞伎町の知らない店だったなら逃げ場なしのボッタクラレ状態の席だ

自分が先頭になり奥へと向かう

若手が先陣を切って先を歩くべきか それとも先輩の後を大人しく歩くべきなのか 迷うところだが

最初にクラブに入った時にクマさん先輩が ドアを開け押さえていたので 自分が入り次に先輩の友達が入り最後にクマさん先輩が入った

若手がドアを開け待ってろって話だが自分は その辺の礼儀に疎い

そのままの流れで自分が 今 先頭を歩いている

そして自分は壁際の角席 一番奥のソファー席に座った

壁に備え付けられたソファー席に四人
その対面 テーブルを挟み三人分の椅子が置いてある

最初の人間が奥から詰めて座るのは常識的なこと 自分は何も考えずに奥のソファー席に座った

だが座ってから気づいた

しまった!この席はマズい!
移動しよう

座る場所が…

駄目だ 間に合わない

クマさん先輩と先輩の友達も席に座ってしまった

クマさん先輩は自分と同じソファー席の方に 先輩の友達は三つ並ぶ椅子の真ん中に座っている

今更 席を変わってくれとは言いづらいし体格の良いクマさん先輩の腰は重い
頼んでも移動するのを億劫がるだろう

自分の愚かさを恥じる

奥から順に詰めるべきと言う あまりにも日本人的な気遣いと謙虚さが現れた道徳的常識
電車などで角の端の席に座ると片側にしか人が座らないから気が楽だと言う経験則
オセロで角を制する者は世界を制すると言う必勝法

日本にはびこる角が優位説
あの素晴らしき席 壁のソファー側ではなく 今 先輩の友達が座る三つ並ぶ椅子の真ん中の席に座ると言う選択を逃す原因になった

あの席は両側に椅子がある

そう 椅子があるなら女性が座る あの席は両手に花!

いや

テーブルを挟んだ対面 ソファー席にも女性が座るのだから 三方向に花!

いやいや

もし席の後ろに女性が立てば四方向を女体と言う花に囲まれる!

これは まさに

四面女花!!

その席を逃してしまった
自分は先頭を歩いていた 座る場所を選べるチャンスが確実にあったのだ

なのに 最高の席四面女花を選べなかった

自分の今 座る席は左側が壁だ
女性が座れる場所は右側とテーブルを挟んだ対面のみだ

もう両手に花は望めない

しかし この時の自分は楽観し 左側に女性が座らないのかと少し損した気分でいただけだった

そして きらびやかなドレスに身を包んだ女性達がやって来た

宴は まだ 始まってすらいない

自分の苦悩と思案の夜も始まっていないのだ

全ては この壁際の角席から始まるのだから

続く

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