前編 俺には お前しかいない 変えてやるよ お前の人生を

2017年11月1日

今年も もうすぐ終わりですね

月日の早さをイヤでも思い知らされる時期ですね

今年 一年を振り返って何がありましたか?

特に何もない

いいんじゃないですか それでも

今日と明日に どんな違いがあると言うんですか
大晦日から元旦になったからって 明日が今日になっただけの事
今日と明日の違いは 天気ぐらいのもんでしょ

自分自身が変わらなきゃ訪れる毎日も変わらない 別に無理して変える必要もないんだろうけど
ところで こうゆう話を ご存じですか?

これは 昔々の西洋の話

王子様と ある女性の話…

火山のある小さな島に それは綺麗な若い女性がいました
彼女は優しい父親と母親に愛情たっぷりに育てられ大きな屋敷に何不自由なく暮らしていました

ところが
母親が病気で亡くなると彼女を取り巻く環境に火山の噴煙のような黒く重い不穏な空気が漂いだしました

その原因は 継母と その二人の娘の存在でした

心優しく一代で財を成した父親は最愛の妻を亡くした悲しみから抜け出せずに酒に溺れる日々を送っていました

そこに付け入るように女が高価な酒を大量に持参し酔った父親に言葉巧みに再婚を進めたのです

父親は再婚し女は彼女の継母となったのです

継母となった女は二人の娘を引き連れ大きな屋敷に引っ越して来て父親の財産を思うがままに使い始めました

父親は それを見ては再婚を深く後悔し自分の大切な娘が邪険に扱われるのを見ては落ち込むのでした

そして父親は心労と疲労しかない現実から逃げるために深酒をし それがもとで身体を蝕まれ亡くなってしまいます

父親が亡くなると継母と二人の娘は彼女に更に冷たく当たるようになります

大きな屋敷の掃除 沢山の洗濯物 大量の食事の用意
それら全てを彼女ひとりにさせるのです

疲れ薄汚れていく彼女を見て継母と二人の娘は汚らしいと笑い馬鹿にするのです

いつしか彼女の寝る場所は暗く汚い屋根裏部屋になりました

それでも彼女は父親と母親との思い出が詰まった この大きな屋敷を守るためと我慢し耐えていました

彼女の住んでいる火山のある小さな島から遠く離れた大陸に大きな城がありました

その城の王子は 最近 元気がなく何かに悩んでいるようでした

幼少の頃から王子を知る執事は そんな王子の姿を見ると心配で心が痛むのでした

執事が王子に「どうかされましたか?」と尋ねると王子は執事の顔を見て大きな吐息をして 更に悩みだすのです

執事は王子の悩みの解決に自分が役に立てない事を悲しく思いましたが 王子が悩むのは王子が ひとりで過ごす時間が長いせいだと考え 自分の胸の奥がチクリと痛むのを抑えながら
国王に王子の結婚相手を探してはどうかと進言しました

国王は その進言を受け入れ王子の結婚相手を見つけるための舞踏会を開くことに決めました

城で舞踏会が開かれると言う話は瞬く間に国中に広がりました

それは大きな屋敷に住む継母と二人の娘 そして彼女の耳にも届きました
継母と二人の娘は王子に見初められれば もっと贅沢な生活ができると考え舞踏会に着ていくドレスや馬車に沢山の お金を使いました

それを見て彼女も舞踏会に興味が沸いたのですが
継母と二人の娘は そんな汚いなりで王子が見向きするはずない それよりも あなたが舞踏会に来れば この島の恥だ と笑いました

一方 お城では舞踏会の準備が着々と進められていました

執事は 王子の様子を伺います 王子は結婚相手を探す舞踏会が開催されると決定すると ますます元気が無くなったのです

執事「王子 どうしたのですか?舞踏会には国中から女性が集まります 好みの女性も見つかるでしょう」

王子「…執事よ 俺の結婚相手を探す必要などない 舞踏会は面倒なだけだ」

執事「そう言われましても 王子は いずれ国王になるのですから お相手は早くに見つけた方がよろしいかと」

王子「執事 お前は俺について何年になる?」
執事「五つになる頃から お側におりますので20年になるかと…」

王子「20年か…子供の頃は いつも一緒に遊んだな 風呂に入るのまで一緒だった」
執事「懐かしい思い出です」

王子は遠くを見ながら呟きました

王子「執事よ 今後も俺と一緒にいる気はあるか?」

執事「王子さえ宜しければ 30年でも60年でも お仕え致します」と執事は胸を張り答えます

王子は大きな胸をそらし張り切る執事を見ながら「60年でも一緒にいるか」と笑いました

久々に見た王子の笑顔は子供の頃に見ていた無邪気で可愛い笑顔そのものでした
少年のように笑う王子を見て執事の心を甘く切ない気持ちが溢れてきます

執事も笑顔で答えます「王子が嫌!と言うまで お側で頑張ります では王子 舞踏会の服を仕立てに一緒に行きましょう」
王子「嫌! 行きたくない」
執事「王子~」
王子「冗談だ さっさと済ませよう」

王子は力強い足取りで歩きだしました
それは覚悟を決めた王子の心が来るべき未来に向け前に踏み出しているようでした

舞踏会当日

朝から国中が お祭り騒ぎです

夜に開かれる舞踏会に出席するために国中の女性達は準備に大忙し

継母と二人の娘も華やかなドレスを着て豪華な馬車に乗り お城に向かいました

大きな屋敷に残された彼女は その様子を眺めることしか出来ません
「私も舞踏会に行きたかった…」そう思っても彼女は何一つ舞踏会への準備をしていません

唯一の救いは 継母と二人の娘がいないため大きな屋敷の掃除などの家事をしなくて済むことぐらい

彼女は暗い屋根裏部屋のベッドに横になり何をするわけでもなく お菓子を食べていました
そしてウトウトと眠りに落ちてしまいます

日は暮れて舞踏会の開始を告げるベルが国中の教会で鳴らされます

ベルの音で目覚めた彼女は驚きました

目の前に いびつに曲がりくねった杖を持ち 頭に黒い三角の帽子を被り 夜の闇のような真黒な服を着た老婆がいたからです

彼女は老婆に問いかけました
老婆は魔法を使い 彼女の願いを叶えることが出来ると言います
舞踏会に参加したいなら連れて行くことも出来るとも言いました

でも彼女には舞踏会に着ていくドレスがありません
彼女がそう言うと老婆はニヤリと笑いながら持っている杖を振りました

すると
彼女の着ていた服が金銀をちりばめた煌めく青いドレスに変わりました
そして履いていた靴は人の技術では 作りえない綺麗なガラスの靴になったのです

彼女は喜びました
このドレスと靴なら誰もが羨み誰よりも目立つことが出来る

でも これだけでは舞踏会に行くことは出来ません

馬車が必要です それも誰よりも豪華で派手で最高に目立つ馬車が必要です

続く