オペってきたぜ 2 粉瘤摘出手術と乳首

2017年11月1日

背中に出来ていたデキモノが些細なアクシデントにより破裂した
自分は皮膚科に行き診察を受ける

デキモノは粉瘤(ふんりゅう)であり簡単な手術での処置が必要と言われた

そして手術を受ける日が来た
自分は不安と期待を胸に秘め 皮膚科の待合室で名前を呼ばれるのを待っている

ジリジリと過ぎる時間 ピクピクと興奮する二つの乳首
もうすぐ 若く可愛い女子看護師に自分の乳首をさらけ出す時間が来るのだ

看護師

オペ開始

予約した時間ピッタリに名前を呼ばれた

自分は診察室の中へと入る
受付で手術を受ける方は右の方へと言われていたので そちらに向かう

そこはカーテンで区切られた小さな部屋が三つほど並んでいた
中はベッドが1つ置いてあるだけの空間

漫画喫茶や簡易なカプセルホテルを思わせる

自分がベッドの横に立つと後ろから声をかけられた

声をかけてきたのは見た目40代の女性の看護師だった
受付にいる女子は皆 若く可愛いので自分は勝手に決めつけていた 若く可愛い女子看護師が来ると

どうやら医師の手伝いをするのはベテランの この看護師のようだ

自分はジャンバーを脱ぎカゴに入れながら落胆していた

話が違う!と言っても実際に誰かに話を聞いたわけはでないが

自分の想像では ここは若く可愛い女子看護師が来るハズだった
そして恥じらいながら自分の二つの乳首を見てもらうハズだった

計算が狂っている 現実が想像を拒絶している

だが
すでにサイは投げられた 時間は動いている
ここは臨機応変に 柔軟に思考を変換すべきだ

いいじゃないか!

年上の女性に 初めてあったばかりの女性に いきなり二つの乳首を見られる
ドキドキするじゃないか!十分だろ!

それでいいだろう!

元々は あの時の
大好きな あの子との思い出を甦らすための疑似体験なのだから

薄暗い明りの中 向かい合い キスをして あの子の服を脱がせ 自分も服を脱ぎ
まぁ実際には あの子の服のボタンを上手く外せなくて あの子 自身が外して脱いでくれて
あの子の綺麗な二つの乳首と自分の二つの乳首が「ベッドにうつ伏せに寝て下さい」

えっ!なんだって!

年上看護師さん 今 何て言った?聞き間違いか?
いきなりベッドですか?!

いや ちょっと待って! 手順が違う!順序が違う!
まだシャツもTシャツも脱いでないよ 上着を まだ着ているんだよ

乳首は?乳首 見なくていいの?年上看護師さん
見ないの?本当に?自分 乳首 二つあるんだよ 見ないの?

自分は困惑しながらも年上看護師さんの言葉に従い 服を着たままベッドにうつ伏せになった

背中の手術をするのに上着を脱がないとは どうゆうことだろう

自分が皮膚科にきた目的は女子看護師に乳首を見てもらうためではなかったのか
そのために朝からワクワクとドキドキを感じながら悶えていたのではなかったのか

自分が自問自答に没頭していたら

年上看護師さんが 「少し服をめくります」 と言った
そして自分の着ているシャツとTシャツを一緒に上へ肩の方へとまくりあげた

その手が あったか!

この方法なら服を脱がずとも背中を露出することが出来る!

盲点だった

自分の考えの甘さを思い知る 背中の手術なら上着を脱ぐ 必ず乳首が露出する
必ず二つの乳首を見られてしまう いや 見てもらえると考えていた

そうまでして
そうまでして乳首を見たくないと言うのか 年上看護師さん

お前の乳首は見るに値しない お前が乳首を露出する ほんの僅かな瞬間さえも奪う
そのために この方法を取ったと言う事か 年上看護師さん

もしかしたら自分が異性に乳首を見せる最後の機会だったかも知れないのに

それを あなたは容赦なく潰すのですね 年上看護師さん

自分はベッドにうつ伏せになり背中を露出し
両腕は どこに置くのか指定されなかったので うつ伏せになった顔の下に組んで置いている

まるで え~ん え~んと泣いている子供のような状態だ

今後 ワクワクとドキドキと共に異性に乳首をさらけ出すことが生涯 起こらないかもと思うと泣けてくる
本気で泣いてしまおうかと自分が心を迷わしていたら

「お待たせ~」 と言いながら 白髪の医者がやってきた
空気の読めないジジィだ

人が乳首を見て貰えなくてへこんでいるときに軽いノリできやがって
自分に何の用があると言うのだ?

オペにて笑う

「では 粉瘤の摘出手術をします」 白衣姿のジジィは そう言った
ああ そうだった 自分は手術を受けに来たのだ

それこそが目的だったと思い出した

空気の読めないジジィとか思って ごめんなさい 先生
謝るから だから 痛くしないで

二つの乳首を披露する場を無くした自分は急に心細くなっていた

皮膚科に訪れる前にあった高揚感が消えうせ 今は それが大きな反動となり精神を弱くしている
失望と落胆が自分から力を奪っている

こんなジジィの先生に心の中で許しを請う時点で何だか負けている 確実に負け組である

しかし これから行われる事を思うと願わずにはいられない 痛くしないでと

先生は言った
「じゃあ 今から麻酔を打つのでチクッと痛いですよ」
願っている そばからこれだ 麻酔注射 避けては通れない関門 泣かないように頑張らないと

「ごめんね 手が冷たいかも」 と言いながら先生は背中に触れて来た
触れられた瞬間 身体が硬直した 先生の手が かなり冷たい

冷たいと自覚しているなら 手を温めて来いよ!このジジィ!と自分が心の中で叫んだと同時に
チクッと背中に刺すような激しく鋭い痛みが走った 身体がビクッと震える

刺すような痛み 違う 刺さっている げんに刺さっている 針だ 麻酔注射だ
「痛いですよね 少し我慢してください」 と先生は言う
言われなくても そうしている それしか出来ない 冷たい手が触れた瞬間から ずーっと我慢している

鋭い痛みが 背中にズンと押し込まれてくる 麻酔の液を注入しているのだろう

自分は思い出す

昔 誰かが 誰かが言っていた気がする

痛いときは異性の おっぱいを思い浮かべなさいと そうすれば痛みが和らぐと

今だ 今するしかない その方法を実行すべきタイミングは
自分は痛みに歯をくいしばりながら異性の おっぱいを懸命に思い浮かべる

ああ
あれは家族で田舎に帰った暑い熱い夏の日だ

緑の田んぼの稲が熱気をおびた風にゆられ アスファルトは熱さでゆがむ
空は ただただ青く高く 白い雲が山の向こうに大きくそびえ立つ

半ズボン姿の小さな子供 あれは自分だ
田んぼのあぜ道を汗だくになりながら走り 小さな小川の小さな魚を追いかけている

朝からセミの鳴き声がミーンミーンと騒ぎ 空気が重いと感じるほどジメッた蒸し暑い夏の日のことだ

暑さは昼が近づくほど上昇していった

その日の昼ごはんは 大きなざるに山盛りに置かれた そうめんだった
小さな四角い氷が沢山 そうめんの上に乗っていた

暑さで解け始めている氷のしずくが太陽に照らされキラキラと光る
扇風機がうなりながら熱い空気をかき回している

皆を呼んで来てと言われた小さな子供の自分は 古く広い田舎の家の中を走り周り皆を呼びにいった

急な階段を両手を使ってバタバタ上り二階の部屋のふすまを開ける
今は亡き おばあちゃんの後ろ姿

ああ

おばちゃんは 「おお 呼びに来てくれたのかい?」 と優しく言いながら
ああ やめてくれ 嫌だ 忘れていた 消していた

ゆっくりと こちらを振り向い
ああ ダメだ 封印していた記憶 忌々しい思い出

おばあちゃんは……
こっちを振り向い……ああ…振り向かないで……ふく……ああ…着替え中で…裸……

はあぅ
痛みが 背中で感じた痛みが自分を現実に戻した

助かった 危うく おばあちゃん(異性)の おっぱいを思い浮かべるところだった

でも 何が背中で起きているのか?
麻酔注射は さっき打っていたんじゃないのか?まだ打つのか?

そして 更に痛みがきたが最初に感じた痛みよりも遥かに弱い

次は触られているとしか感じない 麻酔が効いてきたのだろう

だが 注射は続く

自分は背中に感じる微かな感覚で気が付いた

どうやら患部を中心に丸く囲むように麻酔注射を打っているようだ

自分では見れないが時計のように注射の痕が背中に点々とできているだろう

今 何時のところを打っている?
最初が12時とするならば 4回 いや5回は打たれた ならば5時
あと6回は打たれるのか?

しかし自分には その回数を知る事は出来なかった

麻酔が効いてきた自分の背中は感覚が鈍くなり針が刺さったのか どうかさえ感じなくなっていた

「痛い所はないですか?」 と先生が聞いてきた
患部の周辺を触り麻酔の効きを確認している
自分は痛くないので素直に 「ないです」 と答えた

「では 患部を切っていきます 痛かったら言ってください」 と先生は言いカチャカチャと金属音をたて手術を始めた

横には年上看護師さんがいて 先生の指示を受け そのたびに 「はい」 と小さく答える
自分は うつぶせで組んだ腕の上に顔を乗せた状態で身動きをせずに静かにしていた

先生が 「2本目」 と言う
年上看護師さんが 「2本目ですね」 と答える
手術は問題なく進んでいくが 自分の方に ある問題が起き始めていた

組んだ腕に顔を乗せていたので腕が痺れてきた
ついでに腰痛持ちの自分の腰が うつぶせの姿勢でいるために痛みだしてきた

腕の位置を変えたい 痺れが辛い
だが変に動いたなら先生が手術ミスをするのではないかと思うと動けない

腰の痛みも辛い

先生は痛かったら言ってくれと言った

言うべきか 伝えるべきか
そうしたら腰に麻酔を打ってくれるかも知れない
腰の痛みを消してくれるかも知れない

もう少し 我慢してみようと自分が決意したときに 先生が 「3本目」 と言った
年上看護師さんが 「3本目ですか?」 と答える

先生は 「う~ん 3本目」 と言う
「残り1本です」 と年上看護師さんが先生に伝えると先生は 「うん もういらない」 と言う
手術は確実に終わりに近づいている

突如 「あ やっぱり もう1本ちょうだい」 と先生がアハハと笑いながら言う
年上看護師さんもクスクスと笑いながら 「もう1本ですね」 と答えた

自分はオペ中にて二人の笑い声を聞き不安になった

もしかしたら この二人

自分の背中の上で酒盛りしてるんじゃないの?
背中をテーブルに缶ビール飲んでいるんじゃないの?

だから2本目とか3本目とか言っているんじゃないの?
やっぱり 飲み足りないから もう1本 みたいな感じで 「先生 お酒 お好きですね クスクス」 みたいな感じで盛り上がっているんじゃないの?

人が腰の痛みに堪え我慢しているのに楽しそうに仲良く笑うなんて薄情にもほどがある

自分も仲間に入れて欲しい

これで自分に新たな選択肢ができてしまった

先生に
「腕が痺れたので動かしていいかと」 聞くのか
「腰が痛いので何とかしてくれ」 と言うか
「仲間に入れて」 と頼むか

どれにすべきなのか この中に最善の選択肢はあるのか

続く

般若

紙切れ