お前といると初めての事ばかり体験するよ

エアー君 登場

2015年の話だ
年の瀬も迫った週末の夜にスマホが鳴った

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自分と同じ37歳で家も近いために 何かと一緒に飲みに行くことが多い通称 エアー君からだった

別に普段からエアー君と呼んでるわけではなく
ブログに登場させるためにエアー君と命名しただけのことで深い名前の由来はない

サラダ

会社で知り合った仲なので5,6年の付き合いになるだろう

そのエアー君からの 「ファミレスで軽く食べて飲もうぜ」 と言う誘いの電話だった

誘われたら参加するのが自分の流儀なのだが 考えもなく誘いに乗ると後で後悔するものだと最近になって やっと気付き始めた自分は即答せずに間を置いた

37年間 この体を支配し つねに頂点に君臨している我が頭脳が導き出す答えを待ったのだ

この頭脳がポンコツだから後悔ばかりするのだが そんなポンコツでも時間と
たまに叩いて刺激を与えれば ましな答えを出すだろう

頭脳は思考する

もう年末だぞ 忘年会も控えてる
ここで安い金額とは言え金を減らすのは得策ではない
正月休みもあるんだぞ
発泡酒ではなくビールを飲みたいだろう
新年会もあるかも知れない

もしかしたら道行く美女が映画に行こう 食事に行こうと言ってくるかも知れない

エアー君は37の男だぞ
男二人でファミレスですか? 37は おっちゃんの部類に入るんだぞ
おっちゃん二人でファミレスですか?
ファミレスですか?(笑)ないよね~ それ ないよ(笑)

頭脳の答えは決まった

誘いを断る それが頭脳の出した答えなら従うだけだ

そう決めた矢先に 「酒代は俺がおごるよ」 とエアー君が言った
「すぐ行く」と答える自分が そこにいた

自分は引き出しから適当に取った灰色と黒のボーダーのロングティシャツに着替え家を出た

エアー君は すでに店の前にいた

二人並んでファミレスに入ると店員の女の子が小走りで近寄ってくる
ふとエアー君を見ると人差し指と中指を唇に当て その子に向け投げキッスを連発していた

その子は それを見ると 「喫煙席ですね」 と答えた
どうやらエアー君はタバコを吸うジェスチャーをしていただけのようだ
この男は何をするか予想できない所があるのだ

店員に案内され 自分は喫煙席の窓際のソファー席に座りエアー君は テーブルを挟んだ対面の椅子に座った

生中を二つ頼み エアー君はハンバーグとライスついでにサラダを頼み
自分はパスタとフライドポテトを頼んだ

待っている間 エアー君は厚手の上着を空いてる椅子に掛け
灰色と黒の横じまのトレーナーの袖をまくりカバンからタブレットを出した

そして おもむろに
「登録したいサイトがあるんだけど分からない所があるんだよ」と言った
「自分もそんなに 詳しくないぞ」と返すと

「でも赤原はパソコンでブログとかしてるから勘で何とかなるでしょ」
「あれ?エアー君 ブログ読んだ?」
「いや タイトル忘れて読んでない」
「タイトル簡単だぜ 忘れるか?簡単に読めるショート日記だよ ショート日記って検索しても出ると思う」自分は鼻を高くして言った

「あっ!ホントだ ショート日記でも出た スゲーな」
エアー君が感心しているときに生中とフライドポテトとサラダが運ばれてきた

「赤原 ちょっと飲んでつまんでてよ 俺 ブログ読むから」
「どうぞ」と自分は答え 生中を飲みながらフライドポテトをつまむ

エアー君はタブレットを操作しながらも生中を飲みフライドポテトをつまみサラダを食べる

時折 大きな笑い声をあげブログを読んでいた
大きな声で笑う内容のブログではないのだが…

楽しんで貰えているなら書いた自分としては幸いである

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そんなエアー君の様子を見ながら自分は内心 エアー君はサラダをシェアする気はないのか!と思っていた
試しに 遠まわしに探ってみる

「エアー君 サラダとか頼むんだね」
「最近 野菜を食べていないから 野菜を摂らないと心配じゃん」

野菜不足ならシェアしないのも仕方ない

こっちはフライドポテトをシェアしているけどな!と思いながら 勝手に生中をお代わりしてみた
エアー君はブログに夢中で気づいていない

これは神の与えてくれたチャンスか?生中飲み放題タイムなのか?
ここぞとばかりに頼んで良いのか?酒代は誰が出すんだ?エアー君だ!じゃあ仕方ない もっと飲もう

自分が急いで生中を飲んでいるとパスタとハンバーグとライスがきた
顔をあげたエアー君は店員にワインのデキャンタを頼んだ

「コストパフォーマンスは これが良いからね」 エアー君は言う
短い生中飲み放題タイムだった

エアー君はハンバーグとライスを食べながら まだブログを読んでいる

自分はパスタを食べながら手持ち無沙汰を感じていた
どうせ手持ち無沙汰なら右手にフォーク左手にスプーンを持ち 女子的にパスタを食べようかと考えていたらエアー君がタブレットを置き
「喰い終わったら 俺の方の問題に取り掛かろうぜ」と言った

やっと本題に入るんだなと思いながら自分はスプーンの上で丸くまとまったパスタを口に入れた

エアー君のタブレット

お互いに飯も食べ終わり
テーブルの上にはワインのデキャンタとワイングラスが二つ それと灰皿とエアー君の食べ残しのサラダだけになっていた

今更 サラダをシェアされても食べる気にはなれないし エアー君も これ以上 サラダを食べる気はないらしい

その邪魔なだけのサラダの横にタブレットが置いてある

エアー君は 「このサイトなんだけど」 とタブレットを自分に渡した
サイトへの登録方法が書いてある

自分は 「ここをクリックすれば良いんじゃないか?」 とタブレットをエアー君に返した

エアー君は 「パソコンの操作なら ある程度は分かるけどタブレットは何かわかんないだよ」 と言いながら 「ああ 今度 こっから進まない」 とタブレットを また自分に渡してきた

自分はタブレットを受け取り画面に映る説明文を読む
「エアー君 ヤフーとか楽天で買い物してたよね その会員情報でも このサイト登録できるみたいだよ」 とタブレットを返す

タブレットがテーブルの上を行ったり来たりするたびに 残ったサラダのレタスが自分の手に触れてくる

エアー君は 「面倒だから 赤原の横に座るよ」 と言いタブレットを持って自分の横に座った

客も少ない夜のファミレス 窓際のソファー席に37才の男二人が並んで座る

しかもよりによって自分とエアー君は灰色と黒のボーダーの服を着ている

服がかぶっている 無駄にペアールック!
そんな状態の男二人がひとつのタブレットを仲良く見ている

デキているとしか思えないだろう この有り様!
テーブルの上にはワインだぞ!オシャレカップルかっ!デザートは なんにする?かっ!

だが お互い37才 周りを気にしても しょうがない このまま続行だ

仲良くタブレットを操作しながら 登録作業をひとつずつクリアーして行く
「エアー君 あとは このアドレスをコピペして空メールを送ればいいみたいだ」
「分かった アドレスコピーだな」

エアー君はタブレットに映し出されたアドレスを指でなぞる 何度か なぞったあとにアドレス部分を指で叩き始めた

「どうした?エアー君」
「コピー出来ない!」
「そんなバカな!」
「パソコンなら字をなぞって右クリックでコピーとかでるじゃん タブレット駄目だな!指でなぞると途中まで色が変わるのによ」
「コピー出来ないのか?」
「やり方がわかんないんだよ ああ!もう!ここまできたのに!」
「ちょっと貸してみ」
自分はタブレットを受け取り指でアドレスをなぞる 指でクリックしてみる 確かにコピーが出来ない

何か やり方があるんだろうが自分もタブレットには詳しくない

自分が どうすべきか悩んでいるとエアー君が自分の常識にはない発言をした

タブレット

 

「店員さんに聞こう」

「えっ?!」

自分の聞き間違いか?
ファミレスの店員さんに私物のタブレットの操作を聞く?えっ?!ファミレスの店員さんはファミレスのために仕事をしているんだぞ

客のオーダーを聞くのが仕事かもしれないが エアー君 メニューにあったか?
タブレットの操作を教えるって!

えっ?!押しちゃうの?!呼び鈴ボタン押しちゃうの?エアー君!!

ピンポーーン!

奥から若い男の店員が
ズボンの後ろポケットからオーダーを打ち込む機械を取り出しながら自分達のほうに小走りで向かってきた
テーブルについた時には準備万端 オーダーを聞く体制が出来上がっている

「お客様 ご注文は?」
「このタブレットのコピー操作が分からないんだけど」 と普通にオーダーするエアー君

若い男の店員の動きが固まる

そりゃそうだ 動きも止まるさ 初めての事だろうな タブレットの操作をオーダーされた経験は

エアー君 断られるよ たぶん 「すいません そうゆうオーダーは…」みたいに

分かりました ちょっと貸してください」
「えっ?!」 店員さん オーダー聞くのかい!

タブレットを受け取った店員さんは 「隣に座ります」 と言い自分の横に座りタブレットを触り始めた

ソファー席に男三人が横並びに座っている ローカル電車の旅とかで見る風景だなと考えながら
自分は隣に座る店員さんの手元を見ていた

店員さんはタブレットに指を当て何やら試している そして
「すいません このタブレットの操作は ちょっと分からないです」 と言った

エアー君は 「ありがとう ごめんね 忙しいのに」 と言う
「お役に立てなくて…」 と言い 店員さんは奥へと戻って行った

「このタブレット使えねぇな」 とエアー君は言う
「いや 今の店員さんの操作でヒントが見えた」 と自分は声をかけた

店員さんが色々と試していた時に一瞬 コピーの文字が画面に小さく映った

それが解決への糸口だった

自分はタブレットに映るアドレスの先頭の文字の上に指を置く するとコピーの文字が その上に出て来た
その状態で指を横にスライドするとアドレスのコピーが完了した

「エアー君 コピー出来たよ」
「赤原 どうやった?!」
「答えは 長押しだよ 長押しすることでコピーの機能を起こせるんだな」
「長押しだったか!」
「パソコンにはない操作だよな 長押しって スマホやタブレットとか画面を指で直接 操作するようになってからだもんな」

その後 アドレスをコピペ 空メール送信 送られてきたメールからログインで登録完了となった

店員さんにタブレットの操作を聞くとか
エアー君 お前といると初めての事ばかり体験するよ

終わり

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