男気を見る 4 サラダと縦社会 現実を知る

いいでしょう!自分が 取り分けましょう!そのサラダ!!

突如 覚醒したのかの如く自分は動き出した

過去を封じ未来を切り捨てた自分が 今 新たなステージへと踏み出す

その時 過去は己の生きた証となり未来は輝ける希望へと変わる
そして
今 大皿のサラダが取り分けられる!!

緊迫のサラダ取り分け作業

自分は緊張しながら小皿を手に取り大皿のサラダを睨みつける

取り分ける相手は 自分 社長 クマさん先輩 愛姫 エアー君 この5人だ

1人分のサラダの量を計算し配分しなければ最後の人の分が無くなる可能性がある

食べ物の恨みは恐ろしいと言う

はっきり言ってサラダ如きで恨みを買いたくはない

まずは社長にサラダを取り分ける

最初に渡すのは偉い人 それが縦社会の習わしだ

自分はサラダの具材を均等に取り小皿へと載せていく

最初が肝心なのだ ここで取り分けたサラダの量が基本となる

その事は分かっているのだが

社長に取り分けたサラダの量と後に取り分けたサラダの量が同じだと
「ほぅ いい身分だね 皆さん! 社長の俺と同じ量のサラダを食べるんだな!」と社長が嫌味を言うかも知れない

社長が そんな事を気にする心の狭い男ではないと知ってはいるが
今日の社長は風邪で喉をやられてガラガラ声なのだ

少しでも喉を癒したいと願う社長は人よりもサラダを欲しているはずだ

縦社会に平等などない 社長と同じ量を社員が食べていいわけがない

ならばと自分は 小皿から こぼれんばかりにとサラダを超大盛りにし社長へと渡した

そして すぐさまクマさん先輩のサラダを取り分けに入る

クマさん先輩は昔 甲殻類アレルギーがあり会社の旅行などでカニやエビが出てきても食べなかった

その事を知っている自分は気づかいの出来る後輩として緑の葉っぱ類だけを小皿に盛りパチ先輩に渡す

カニやエビにある共通点がニンジンやトマトにもある 色が赤いのだ

だから自分は パチ先輩のサラダを緑一色(リューイーソウ)に染め上げた

こうしておけば
「ほぅ いい根性だな 俺に甲殻類(赤い色)を食べさせて殺すつもりなんだな!」と言われなくて済む
順調である

手際よくサラダを取り分ける自分に自分自身が惚れ惚れする
そして次はクリリンの分だ

……

……

……愛姫の分だ

エアー君と愛姫 どちらにサラダを先に出すかと言えば女子である愛姫になるだろう

自分は大皿から慎重に具材を選び小皿に盛りつけていく

女子ならば彩りを気にするはずだ 見栄えを気にするはずだ

自分は色の配置に特に注意しながら小皿にサラダを取り分ける

愛姫は可愛いから特別にプチトマトを2つあげよう
ついでに大きめに切られているニンジンがあったので それも小皿に載せる

何だかプチトマト2つとニンジンがコラボレーションして男のシンボル的な感じに見えるが
それは自分が意図して盛りつけたわけではなく たまたま そうなっただけである

たぶん愛姫は この独創的に取り分けれたサラダを見て

「ほぅ いい感じね 私 写真を撮ってアップするわ!インスタ映えよ!」と言って喜ぶだろう

愛姫がツイッターやフェイスブックなどをしているとは聞いたことがないし
ブログもインスタもしてはいないだろうが 写真を撮ってアップすると確信を持って自分は愛姫にサラダを渡す

そして次に自分の分のサラダを取り分ける

自分のサラダは少しでいい 野菜が大好きで腹いっぱい食べたいなどは思っていない

野菜は少しあればいい この後 エアー君の分があるのだ

ここで自分が野菜を取り過ぎればエアー君に何を言われるか分かったもんじゃない

自分は雑に大皿からサラダを取り小皿に載せ ついでに大量に残っていたシーチキン

取り分けるのを忘れていた大量に残ったシーチキンを 全て自分の小皿に載せた

「ほぅ いいシーチキンだ ビールには最適だな!」と思いながら自分は目の前に小皿を置いた

最後はエアー君の分だ

エアー君は飲み会のたびに「最近 野菜 食べてないからな」と呟くが

これは言い換えれば 今日は野菜を食べるぞと言う宣戦布告なのだろう

と言うか この男 飲み会の時にしか野菜を食べない習性があるのかも知れないと勘ぐってしまう

そんな男に小皿でサラダを渡したら自分が器の小さい男だと勘違いするだろう

そもそも サラダを取り分けることに飽きた

自分は大皿に残ったサラダは全てエアー君の分だと言う意味を込めて そのまま大皿をエアー君に差し出した

ここまでの気遣いをしたなら
「ほぅ いい男だ 赤原!お前は本当に いい男だな!」とエアー君は べた褒めしてくるだろう

さぁ!!サラダは取り分けた!!皆の衆 思う存分 食べてくれ!!
そして見事にサラダを取り分けた自分に言葉をかけてくれ!!


歯の浮くほどの称賛の言葉を期待する自分

そして 配られたサラダを見た面々の反応は

社長が怒る!!
「俺はウサギじゃないんだよ!こんなに野菜が食えるか!」

クマさん先輩が唸る!!
「葉っぱだけじゃないか!青虫か!俺は腹ペコ青虫か!」

愛姫が叱る!
「これセクハラよ!確実にセクハラよ!」

エアー君がこける
「ズッコー!!」

と言うツッコミさえなく ただ普通に皆 サラダを食べていた

はっきり言って がっかりだ

わざわざツッコミをしやすいように露骨にサラダを分けたのに何一つ言葉をくれない

唯一 エアー君が大皿ごと渡された事について
「やると思ったよ」と言い笑ってくれただけであった

社長は話に夢中でサラダに気付かない

クマさん先輩は 緑一色のサラダに不平がないのか何も言わない

愛姫は プチトマトで作った プチセクハラサラダを美味しそうに頬張っている

自分の努力に対する このスルー

食べ物の恨みは怖いんだぞ!ちゃんとフォローして!と言いたくなるが

飲み会の出だしから小言を言うのも はばかれる

自分は このボケ殺しの恨みを胸の奥底にしまい込み シーチキンを食べる事に専念した

心の中では シーチキンばっかし こんなに食えるか!と思いながら……

続く