コウモリ エアコン ハイル 3 守られているのさ

いる!!見える!!黒い物体が!!

エアコンの内部 奥の奥に明らかに機械とは違う物体が見える!!

こうもり

これが全ての元凶 全ての始まり そして全ての終わり
この黒い物体の正体を知る事が今の自分の使命である!!

ああー マジ怖いんですけど……

割り箸で捕まえてみよう

外したエアコンの裏から わずかに見える黒い物体に向け
自分は割り箸を差し入れる

デカい唐揚げを箸で持ち上げるように掴むイメージだ

緊張で 身体が 指先が 震える

自分が恐怖でビビッて震えてるわけではない 緊張で震えているのだ

プルプルと小刻みに震える割り箸の先が黒い物体に触れた

すると黒い物体は キーと小さな声を出しながら さらに奥へとエアコンの前面の裏側へと逃げる

「やっぱり コレ コウモリだよ!!」と自分は扉の隙間から覗いている嫁に言う

ネズミなら エアコンを外した瞬間に走り出し逃げるだろうし
なんせ ネズミはキーとは鳴かない

コウモリは外の配管パイプの隙間からエアコン内部へと侵入したようだ

外の配管パイプの隙間から

配管パテ

配管パイプをたどり室内側の この穴からエアコン内部に侵入

室内配管

最初から 自分は そうであろうと思っていたが

嫁は エアコンの中にコウモリが入っているの?そんな事があるの?と多少 訝しんでいたし
エアコン担当者は断言していた 絶対にコウモリはエアコンの中に入らない

確かにコウモリではない可能性も僅かにはあった が
これで正真正銘 エアコン内部にコウモリが入った事実が明確になった

正体は分かった これで めでたし めでたし

おしまい
とはいかないのだ!!

コウモリは 依然 エアコン内部 それも手の届かない前面部の裏側に逃げ込み存在している

そして何よりも自分の中にエアコン担当者への恨みにも似た怒りがあるからだ

エアコン担当者は嫁を小馬鹿にした
それは旦那である自分も小馬鹿にされたと言える

しいて言うなら子供も含め家族全員が 我が血族その全てが ついでにエアコンにコウモリが入り困っている人々 全てが小馬鹿にされたのだ

自分が 見るのさえ嫌な怖い怖いコウモリを ここまで追い詰める事が出来たのも
エアコン担当者に対する復讐心があっての事だ

逃がしはしない
コウモリもエアコン担当者も

だが その思いとは裏腹に状況は容易ではない

割り箸が届かない所へ逃げたコウモリ このままでは手の打ちようがない
自分は 今いるエアコンの背面から移動しエアコンの前面へと回る

その際
扉の隙間から嫁と覗いている 2歳の息子が「こうもり? こうもり?」と言葉の意味を尋ねてきたが
自分には それに返答する余裕はない

ダディは 今 コウモリ相手に真剣勝負をしているのだよ 息子よ

ここまで必死になったのは 服を着てシャワーを浴びた あの日以来かも知れない

過去の出来事が走馬灯のように頭をよぎりつつも
エアコンの前面に回った自分は
コウモリが逃げ込んでいるであろう場所を推測して 手のひらで張り手をするように2回程エアコン前面を叩く

叩いた時の音と振動でエアコンの中にいるコウモリがビックリして背面の手の届く範囲に出てくるのではないかと思ったのだ

叩くと同時に自分は すぐさまエアコンの背面へと移動を開始する

ここは迅速に行動しなければならない

音と振動でビックリしたコウモリが奥から出て来た時が割り箸で掴むチャンスなのだ

自分は疾風のごとく身体を動かしてエアコンを回り 背面を見

「うぎゃわぁぁぁぁぁ!!」
「いる!!目の前に!!コウモリ!!コウモリ!!」

自分は もうパニックだ

コウモリはエアコンの背面部分に その奇怪な姿をさらけ出していた

自分は 奥から出てくるコウモリを予想していたのだが 予想よりもコウモリの動きの方が速かった

コウモリはエアコンの背面部分を外へと繋がる配管パイプを目指すように歩いていた

不意を突かれた自分は目の前に 突如 現われたコウモリを見て悲鳴をあげてしまったのだ
その悲鳴は嫁と息子の脳裏に深く刻まれると同時にパニックをも伝染した

自分は慌てふためきながらも 嫁に「ビニール袋!!」と叫ぶ

コウモリを割り箸で掴むなど出来ないと 自分は この瞬間に悟ったからだ

嫁は訳も分からずビニール袋を探す

「大きいの?!小さいの?!」と嫁がテンパりながらビニール袋のサイズを聞いてきた

自分は

「大きくはない!大きくはない!」とコウモリのサイズを答える始末 完全にパニクっている

息子は
「こうもり?こうもり?」と連呼する

嫁からコンビニ袋を受け取った自分は 右手をコンビニ袋に突っ込み手袋のように装備した

心なしか防御力が上がった気がする

自分はコンビニ袋を装着した右手をコウモリを掴むべく差し出した

第3ラウンド コンビニ袋VSコウモリ

逃げるのに必死なコウモリ 最初から必死な自分

残っているスタミナはコウモリの方が優位だろう

自分は 精神 肉体共に疲れて来ている  先ほどの不意打ちがモロに効いている
これだけを見れば自分の方が不利な状態だ

だが
気象条件が自分に味方していた 今は昼である しかも晴れだ

コウモリは夜行性だ 急な光に面食らったのか飛ぶ事を忘れている

これは大きなアドバンテージ

今がチャンスと自分はコウモリをコンビニ袋をした右手で掴んだ

そして掴むと同時に左手でコンビニ袋をひっくり返す
中と外が入れ替わる
コンビニ袋の外で掴まれたコウモリは コンビニ袋の中で捕らわれの身となる

ついにコウモリを捕らえる

自分の右手はコンビニ袋で守られていたので傷ひとつなく済んだ

そして
コウモリは鳥獣保護法にて守られているので捕獲してはいけないのだ

捕獲するには許可がいる
なので 今回の場合 捕獲ではなく保護したと言うのが正しいだろう

なんにせよ エアコンの中に生息していたコウモリは 今やコンビニ袋の中だ

コウモリ

これで終わった めでたし めでたし

おしまい
には出来ない!

真の戦いは これからだ

そう最大の敵 大型電気店のエアコン担当者が残っている

次回 最終ラウンド 自分VS大型電気店

続く

般若

紙切れ