エロDVD 始まりの章 十年前の物語
受け継がれしもの
今から十年前のクリスマスの事だ
自分は その日 会社の先輩からエロDVDを貰った
大晦日に向け早めの大掃除をしていた先輩が処分に困り クリスマスに当てつけ自分に無理矢理に押し付けて来たプレゼントだ
エロDVD その数 40枚!
パッケージにはイヤラしいHな姿の女性達
だが
自分は そのエロDVDを見ようとはしなかった
興味がないと言えば嘘になる
…いや 正直に言おう
滅茶苦茶 興味があった
40枚あるDVDのパッケージを食い入るように眺めていた
だが やはり再生して見ようとはしなかった
だって その時の自分
DVDデッキを持っていなかったんです
見たくても見るすべがなかったのです
売り飛ばすもの
家に置いといても見る事の出来ないエロDVD
そんなものは 売る以外に有効利用の方法はないだろう
自分は恥ずかしいほど大量にあるエロDVDの入った紙袋を
リサイクル屋の買い取りカウンターに置いた
店内はクリスマスも終わり師走と正月の準備のために忙しそうな人々で賑わっている
真昼の時刻に紙袋に入れられた40枚ものエロDVDがカウンターの上で異質な存在感を出しているように自分には感じた
まるで それは浦島太郎の玉手箱か パンドラの箱かのように
開けてはならぬ他人が触れてはならない そんな予期せぬ何かが起きるかのような気持ちにさせた
そして店員は カウンターに置かれた紙袋から
おもむろに40枚のエロDVDを取り出しカウンターの上に並べていく
――ああ 店員さん 分かっているよ 君の言いたいことは
『スッゲー! 何?この枚数のエロDVDは!
どんだけ好きなんだよ!どんだけスケベなんだよ!いや もうスケベの特上!
あんたどスケベだ!!』って思っているんだろ
――でも 違うんだ 自分のじゃない 見てもいないんだよ
そんな事どうでも いいから早く査定してくれ!
――恥ずかしいだろ!査定を早く!いや待て!店員を増やすな!君 一人で査定しろ!
三人がかりでするな!そして 薄く笑うな!
査定は終わった
――さぁ 目の前に大金を出してくれ!
「DVD古いのが多かったです」
――そんな事を言うな!さっさと金をくれ!
「こちらのは買い取りできないです」
――だから 言うな!
そして冒険は終わった
受け取った金額 580円
売れ残りエロDVD 20枚
――先輩!あんたが正しい
あれは男から男へと受け継ぐものだったのですね
自分はエロDVDの残りを抱え 早々と その場を後にした
お金を580円 手に入れた
羞恥心が10上がった
自動ドアの閉まる音が
レベルアップを告げるファンファーレのように聞こえた
続く
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